基礎知識

サイトM&Aの競業避止義務とは?用語の解説と違反事例を紹介

「サイトM&Aの競業避止義務ってなんだろう?」
「同じジャンルのサイトを何度も運営して売却するのはまずいの?」
「競業避止義務を違反するとどうなるんだろう、、、」

あなたはこんな疑問を感じていませんか?

サイトM&Aには、競業避止義務と呼ばれる取り決めがあります。
この義務によって、売却者は売却したサイトと同じジャンルのサイトを一定期間運営してはいけないとされています。

そんな競業避止義務について、今日は詳しく解説したいと思います。

サイトM&Aの競業避止義務とは?

前述のとおり、競業避止義務とはサイト売却者に対しての制限となっています。
競業禁止規定と呼ばれることもあり、契約書では下記のような文面で記載されるケースが多いです。

譲渡基準日から〇年間は、本件サイトと同一または類似の事業を営んではならない

例えば、あなたはクレジットカードに関するアフィリエイトサイトを運営していて、そのサイトを売却したとします。
売却後、新たにアフィリエイトサイトを立ち上げようと思い、再度クレジットカードのアフィリエイトサイトを立ち上げてしまいました。

この時点で競業避止義務違反となってしまうので注意してください。

なぜ競業避止義務を設ける必要があるのか?

「なぜこのような義務を設ける必要があるのか?」そう疑問に感じたかもしれません。

競業避止義務を設ける理由は、買手の保護にあります。

買手がサイトを買収して今までと同じような成果を上げるためには、市場環境ができるだけ同じ状態であるほうが望ましいです。

もし売手が似たようなサイトを再度立ち上げてしまったらどうなるでしょうか?
売手はその市場をよく把握しており、買手にとっての強力なライバルとなります。

そのため、買手が不利にならないようこういった義務を設けるのが通例となっています。

競業避止義務を違反するとどうなるのか?

では、競業避止義務を違反するとどうなるのか?

まずは、競業となったサイトの運営を停止する必要があります。
弊社で過去に関わったクライアント様の中にも該当した事例がありました。

その方は複数のサイトを運営していて、売却したサイトと同じジャンルのサイトがたまたま残っており、買主さんが気付いたというケースです。
もちろん、買主から売主へ連絡が入ったあとすみやかにサイトは閉鎖されました。

このように、アフィリエイターの中には同じジャンルで固めたサイト群を構築していたり、同じジャンルでサイトを複数展開しているケースが多々あるかと思います。
その場合、もっとも効率のいい対処法は、同じジャンルのサイトはまとめ売りしてしまうことです。

閑話休題。

競業避止義務を違反した場合の対処について、悪質な場合は損害賠償が発生します。

たとえば、過去に日本で起きた知的財産裁判例がありまして、下記の事例では合計1,967,400円の請求が判決で出ています。

本件譲渡契約後の本件サイトの販売実績が同契約締結前より低下したことについては、被控訴人の商品知識、経験、広告手段、販売方法等も相当程度影響したと考えられることを斟酌すると、控訴人の違法行為による逸失利益相当額は、その約3割に相当する178万7400円と認めるのが相当である。
これに加えて、控訴人の違法行為と相当因果関係のある弁護士費用は18万円であると認めるのが相当である。
したがって、被控訴人は、控訴人に対し、得べかりし利益相当額として178万7400円及び弁護士費用18万円の合計196万7400円並びにこれに対する不法行為の後の日である平成27年2月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。

引用元:裁判所
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=86866

自分が一度携わったジャンルは知識も経験もあるので、また手を出してしまいたくなる気持ちは分からなくもありません。

ですが、M&Aという形で事業を譲渡する以上、義務を守る必要があります。

契約書に条項がなくとも違反となる可能性があります。

ちなみに、競業避止義務は基本的に契約書に記載する条項となりますが、仮に契約書に載せていなかったとしても罰せられる可能性があります。

先ほどご紹介した事例も、競業避止義務を契約書に記載していなかったようです。

そもそも、契約書に当条項が記載されているかどうかにかかわらず、会社法第21条3項には「事業を譲渡した会社は、不正の競争の目的をもって、譲渡した事業と同一の事業を行ってはならない。」と定められてるため、この部分で勝訴したようです。

本件判決は、上記の当方主張がいずれも認められ、本件のサイト売買契約が、会社法第21条3項における「事業」の譲渡にあたることを認定しました。

引用元:STORIA法律事務所
https://storialaw.jp/blog/5165

契約書に競業避止義務の記載がなくとも罰せられる可能性があります。

まとめ:売主買主間の擦り合わせは綿密に

本日は、サイトM&Aにおける競業避止義務についてお話しました。

競業避止義務は買手を守るための強力なルールではあるものの、あまりにけん制し過ぎてしまってはM&Aが進まない可能性もあります。

また、アフィリエイトサイトの場合は同じジャンルであってもコンテンツを絞り込んでいるケースも多いです。

例えば、ある特定会社のクレジットカードについての特化サイトを売却したとして、他の会社のクレジットカードに関するアフィリエイトサイトを作ったら競業避止義務になるのか?

2019年現在、こういった判決事例が過去にないため断定的なことは言えませんが、競業避止義務違反にならない可能性が高いと考えられます。
なぜなら、ジャンルは同じであるものの扱っているコンテンツが異なるため、買手の不利益に当たらないためです。

かといって、内緒でこういった事を進められてしまうと、買手としては良い気がしないことは間違いありません。
そのため、M&Aの契約書作りのさいには、お互いに今後どういった展開が考えられるのか正直に話し合い、契約書にも具体的に見える形で盛り込んでおくと、お互いに安心して取引できます。

サイトM&Aの契約書作成の際には、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。